ノギスの謎・なぜ小数部がわかるのか? 具体的に説明します。

当サイトではアフィリエイト広告を利用しています。

技術・科学

アナログ式のノギスが、どういう仕組みで小数部の値がわかるのかを具体的な例を挙げて解説します。

今までなんとなくわかった気になっていたけど、じつは全然わかっていなかったものの一つがこのノギスの仕組みでした。

デジタル式は実用的だけど、やっぱり精緻な美しさはアナログ式がナンバーワンだと思います

ノギスは断然アナログ式

シンプルな仕組みで効果的な装置って、完成された美しさがあります。

たとえばアナログ式のノギス、計算尺、ネオンランプ式の検電器とか。
そういうものに魅了されちゃうんですよね。

とくにアナログ式のノギスは、重いステンレス鋼ということもあって高級感があります。

それに、デジタルでそのものズバリの数値が表示されないそっけなさが、最近の若けぇ者を寄せ付けない孤高のオーラを放っていて、そこがまたイイじゃないですか!

老眼にキビシイってことだけは問題だけど…

まぁそれはそれとして、実はこれまでノギスがどういう理屈で小数部の数値が読み取れるのか、その仕組みを理解していませんでした。

このあいだ書いた記事の、『特性インピーダンスの謎』と同じですね。

特性インピーダンスの謎を、簡単にわかりやすく説明します。
ずっと特性インピーダンスってものが謎だった。 50Ωとか75Ωとか言ってるけど、「インピーダンスなら周波数が関係すんじゃね?」とか、「ケーブルの長さだって関係あんじゃないの?」とかね。 わかってないけど、わかったフリしてこれまでどうにかやっ...

なんとなく「支点をずらしたシーソーみたいな感じで拡大してんのかな?」なんて思っていましたが、そうじゃなかったです。

これは、小数部の値を「量」で捕らえようとすると「0.3 と 0.4 の違い」は人間の目ではわかりにくいけど、「二つの目盛りにズレがあるかどうか?」 「一直線になっているかどうか?」 という単純な差異の判別ならば、かなりの高精度で見分けられることを利用しているのでした。

けっして拡大して見やすくしているわけではないのですね。

不得意なことを、得意なことに巧妙に変換して測定器として機能させている。
賢いなぁ。最初に作った人は天才だと思う。

今回の記事では、このアナログノギスがどのような仕組みで小数部を測定できるのかを、どなたにも(のら犬頭のオレでさえ)わかるように解説します。

目次に戻る

アナログ式ノギスの構造

アナログ式のノギスの外観は下のようになっています。

ジョウ ここに挟んで外径を測ります。
クチバシ 穴とかの内径を計ります。
デプスバー 穴とかの深さを測ります。
主尺 普通の定規と同じ目盛りが入っています。普通はmm。
副尺 主尺の目盛りを縮小した目盛りが入っています。←ミソです
ノギス - Wikipedia

目次に戻る

副尺の仕組み

アナログ式のノギスのキモは副尺にあります。

わたしの使っているノギスの副尺の仕様は、下の写真ようになっています。

ジョウを閉じて、主尺と副尺の目盛りの原点である0を一致させています。

このときの副尺の最後の目盛りである10は、主尺の 39mm を指しています。

これはつまり、副尺の数字が刻印してある目盛りは、39mm を10分割しているということになります。

ビーグル1(左)

ここで簡単のために、
副尺の目盛りは数字の刻印が入っているところのみを考えます。

副尺の 0.5 の目盛りは無視して説明します。

副尺の1目盛りと、主尺の 4mm の関係は次のようになります。

副尺の数字の刻印してある目盛りの1目盛りの間隔は、

39mm ÷ 10 = 3.9mm

主尺の 4.0mm に対して、副尺の1目盛りは 3.9mm になので、
副尺の目盛りは、主尺の 4.0mm よりも 0.1mm 短かくなります。

目次に戻る

小数部が読み取れる仕組み

実際にノギスで測って、小数部が読み取れる仕組みを説明します。
下の写真は 11.4mm のものを測ったときのノギスの状態です。

拡大してみます。

副尺の0は、主尺の 11.? を指しています。
そして副尺の4の目盛りと、主尺の 27.0mm の目盛りが一致しています。

つまりここから 11.4mm であると読み取れるわけですが、
なんでそうなるの? って話ですよね。

わかっております。これから例を挙げて説明いたします。

目次に戻る

ここからが話の核心!

下の画像は 11.4mm の被測定物を測ったときの、副尺と主尺の状態です。
副尺と主尺の目盛りのズレに注目してください。

先頭の主尺と副尺のズレは 0.4mm です。
(これは寸法が 11.4mm だとわかっている、既知のものを計測したから)

そのズレが副尺の目盛りが1増えるごとに、0.1mm ずつ減っていくのが見て取れます。

主尺 4.0mm に対して副尺の 0.1mm というズレは、
先に説明した副尺の目盛りが 39mm/10 = 3.9mm であるということから、

副尺の目盛りは主尺の目盛りに対して、1目盛りにつき 0.1mm ずつ左にズレていくことになります。

そして副尺の目盛りが4になったとき、
先頭にあった0.4mm のズレは消滅し、
その位置で主尺と副尺の目盛りは一致します。

逆に言うと、主尺と副尺のズレがなくなった位置の副尺の値が、
先頭の小数部の値と等しくなるわけです。

アナログ式ノギスで、小数部が測定できる仕組みはこういう事なのです。

目次に戻る

まとめ

  • 小数部を拡大して測定しているのではなく、人間が認識しやすい形に変換して測定している。 (「小数部の量」を、目盛りのズレに変換している)
  • 副尺は、主尺よりも目盛の間隔が縮小されていて、1目盛りの主尺との差が測定精度になる。
    例) 4mm – (39mm / 10副尺目盛り) = 0.1mm
  • 副尺0の位置が小数部の「量」を示しており、副尺の1目盛りごとに測定精度1単位ずつ目盛りのズレは減ってゆく。
  • 副尺と主尺の目盛りのズレが無くなった位置の、副尺の値が小数部となる。
    小数部の値 = 測定精度1単位 × 目盛りのズレが無くなった位置の副尺の値
    例)0.4mm = 0.1mm * 4

目次に戻る

タイトルとURLをコピーしました