中古マンションの一階を買って住み始めたら、育ちすぎた植木の剪定問題で周囲の住人とモメた。そのときの解決に至るまでの過程と手段を記すことにしました。
要約
やったこと
問題解決のために、わたしがやったことは結局のところ次のことだけです。
- 管理組合に「庭木が巨大化して素人の手に負えないので、管理組合の負担で剪定してほしい」と、『要望書』を提出し、理事会側でどうするかを決めてもらった。
するとマンションの管理会社から「承った」と連絡が入り、剪定の実施日が伝えられて、後日、植木屋さんがやって来ると、プロの剛腕でもって2時間ほどで始末してしまいました。さすがです。
費用は管理組合の負担でやってもらいました。
要望書を出してから植木の剪定が実施されるまでの期間は、約一か月ほどでした。
このあたりの共有物の管理と保全に関しては、法的にも曖昧になっていることが多いので、判断に困ったら管理組合に相談することをお勧めします。
大事なことはここまでです。
以降は、もう少し詳細なお話しになりますので、お時間のある方はぜひお読みください。
専用庭の植木の剪定を実施する義務があるのは、誰になるのか?
法的にはどうなのか?
法的にはどうなんだろうと思って調べてみました。
e-Gov法令検索(イーガブ「電子政府の総合窓口」)
建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)
<民法・区分所有法における保存・管理行為等の概念001237128.pdf>
https://www.moj.go.jp/content/001237128.pdf
義務や負担を負うものが誰になるとは明記されておらず、
なんだか曖昧にされています。
「やらなければいけない」といった表現ではなく、「やってもよい」みたいな感じ。
保存行為と管理行為の違いも、いまひとつ明確ではありません。
これらの法的な内容については後述します。
結局、どうすれば良いのか?
それで、結局のところ専用庭の植木の剪定を実施する義務があるのは、誰になるのか? という問題ですが、わたしがネットを漁って調べたところでは、次のような線引きのようです。
- 自分(専用使用権者)が、自身の負担で行うこと。『保存行為』
■例)草むしり、ごみ掃除、できる範囲の植木の剪定
■ - 管理組合の負担で行うこと。『管理行為』
■例)強剪定(外観が大きく変わる剪定)。なんらかの工事を必要とする行為など。
これに記入して印刷し、管理組合の郵便受けに投函すればOKです。
あとは理事会に判断を任せましょう。
- 要望書を管理組合に提出。
- 管理会社が業者に見積もりをとる。
- 見積もりをもとに理事会で決議する。
- 管理会社から、『植栽の剪定のお知らせ』で実施日が通知される。
- 業者による植栽の剪定の実施。
(立ち合いは不要。ただし、専用庭の扉の鍵は開錠しておく) - 以上
(体験談)わたしの場合の事の顛末(含む、戯言)
向かいの家の婆さんに「枝を切れ」と怒られた。
中古マンションの1階を買って住み始めたのだけど、専用庭の手入れはわたしがやらなきゃならんらしい。ネットでも調べてみたが、世間ではそういう風習のようだ。すでに専用庭は、草ボーボーの有様になっていた。なんとかしなきゃ。めんどうだなぁ…
専用庭の使用料は管理組合から強制的に徴収されているので、「金払ってんのに、なんで草むしりしなきゃなんないのよ?」と、いまひとつ釈然としなかったものの、波風立てたくなかったので大人しく長い物に巻かれることにした。
というわけで、ダルマ鎌を買ってきて草刈りをしていたら、
向かいの戸建ての婆さんがフェンス越しにヌッと現れた。
「ちょっとあんた、枝が入り込んで来ていて迷惑なんだけど、勝手に切っても良いか」と、半ギレで怒られた。
「いいですよ。遠慮せずにバンバン切っちゃってください」
それで満足したのか、婆はいったん引っ込んだが、1分で戻ってきて「やっぱりアンタが自分で切れ」と言う。
「でも、ノコギリとか持ってないんすよ」と返したら、
「貸してやる」と、ノコギリとデカイ剪定ばさみを渡された。
終わったら、ノコギリと剪定ばさみは戸境界のフェンスにひっかけておけと申しつけて去って行った。
仕方がないから手の届く範囲の枝を切り始めたのだけど、この木(たぶんソヨゴ)が意外とデカイ。
幹は細いくせに、高さが6mくらいあった。マンションの3階まで達しているので、たぶんそのくらいあるだろう。ネットで調べると、なんでも最大で15mになるという油断ならない木だということが判明した。こんな狭い庭に15mかよ。そんなガンダム並みのもんが突っ立ったらシャレにならん…
そういう状況だったので、素人が手の届く範囲をチョキチョキしたくらいでは、向かいの婆が納得してくれようはずもなかった。
どうして気が付くのか謎なんだけど、わたしが庭に出たとたんに素早く察知して、向かいの婆が巡航ミサイルみたいに植木鉢とかを避けながら飛んできて「木を切れ」とガルガル言う。
それにだ、同じマンションの2階・3階の住人からも「虫が…」とかチクチク言われるようになるに至って、なーーーんか生きづらい圧力がキツくなってきた。
え? わたくしが悪者なんすか?
この木は、わたしが越してきたときにはすでにこの状態だったんすよ。
それに、金払ってんのに自分で維持管理をしないといかんの?
ひどくね?
ちなみに、マンション管理員のおばさんに相談してみたものの、
わけのわかんないこと言ってて埒が明かない。
管理会社への窓口になってくれるのかと思ったのだけど、違うみたいですね。
まったくの時間の無駄でした。
そこで、文書で要望書を作成して管理組合に提出することにしました。
解決
ネットから要望書のテンプレートを拾ってきて、これに
「植木の剪定を、管理組合の負担でやっていただけないでしょうか?
木が大き過ぎて、素人の手には負えないのです。
本件は保存行為の枠を超えて、管理行為に該当すると思います」
てなことを書いて、巨大化した木の写真もいっしょに印刷して管理組合に提出しました。
管理組合への要望書の出し方は、エントランスの郵便受けに「管理組合」と書いたものがあったのでそこに投函しました。マンションによって違うのかもしれませんが、ほとんどこの方式だと思います。
わたしのやったことはこれだけです。
これ以降の処理の流れは次の通りです。
- 要望書を管理組合に提出。
- 管理会社が業者に見積もりをとる。
- 見積もりをもとに、理事会が決議する。
- 管理会社から、植栽の剪定のお知らせで実施日が通知される。
- 業者による植栽の剪定の実施。
(立ち合いは不要。ただし、専用庭の扉の鍵は開錠しておく) - 以上
専用庭の、植木の剪定の義務は誰にあるのか?
そもそも専用庭とはどういうものなのか?
専用庭とは、集合住宅において『共用部分』という分類になります。
共用部分ではあるものの、部屋の住人が専用に使える庭です。
その特権的な使用権のために、使用料を徴収されているわけです。
そういうことなら、使用料は仕方ないとしても、草むしり・掃除・植木の剪定などは、管理組合でやってくれないものだろうか? と思いますよね。
草むしりも腰が痛くなるし、蚊に刺されるし、ごみ袋だってタダではないもんね。
せっかくの休日に、なんでこんなことしなきゃならんのよ? 使用料払ってるのに? そう思いますよね。庭なんかいらないって人にとっては、理不尽な話です。
法律的にはどうなっているのか?
区分所有法
調べたら、法律がありました。それが区分所有法。
下記の第15条~第18条が該当します。
■建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)
漢字多めで、堅苦しい文字がズラズラ…
秒で意識が遠のきますよね。(オレだけか?)
このうち第十七条と、第十八条が、今回の件との関係が深いです。
第十七条では、
形状などが著しく変わってしまうような変更については、理事会の決議が必要で、
そうでない小規模なものなら勝手にやって良いとあります。
第十八条も、基本的には同じことみたいですね。
管理行為と保存行為
管理行為と保存行為については、法務省にドキュメントがありました。
法務省
https://www.moj.go.jp/index.html
民法・区分所有法における保存・管理行為等の概念
https://www.moj.go.jp/content/001237128.pdf
これによると
管理行為 | 処分・変更に至らない程度の共有物の利用・改良行為 (いかに利用・改良するか)(他の共有者の同意が必要) |
保存行為 | 共有物の現状を維持する行為 (各共有者が単独で可) |
だそうです。つまり、
保存行為ならば勝手にやっても良いけど、
管理行為は理事会にかけないとダメってこと。
しかし、具体例を書いていないから、違いがいまひとつ曖昧ですね。
保存行為とは、現状維持行為だということなので、管理行為はそれを超える行為だと解釈できます。
曖昧な記述なのは、おそらくわざとだろう。ゆるく規定して、モメたら裁判しろってことだと思う。まぁいいんじゃないの、法律でがんじがらめだと息が詰まるもんね。
管理行為と保存行為の違いが、ふんわりとわかったところで、それを元に個人が判断して良いんだろう。もしも怒られたら謝って、納得できなかったら裁判すれば良い。
ということで、ネットで世論を調べたうえでの、あくまでわたしの見解ですが、
専用庭における保存行為とは
- 草むしり
- 植木の枝の剪定
- 落ち葉などのゴミ掃除
- 害虫駆除(危険度によっては管理行為になると思う。スズメバチとかドクガなど)
が該当するのだと思う。
一方、理事会決議を必要とする管理行為とは
- 植木の幹の強剪定(形が大きく変わるほどの剪定)
- 『○○工事』といった業者の手を必要とする行為
とかだろう。
しかし、法律では、行為の決定権が誰にあるかは示してあるが、「誰がやらなきゃならんのか? 誰が費用を負担するのか?」については書いていない。どっかに書いてあるのだろうか?
「保存行為は、各共有者がすることができる」と書かれているけど、これは『できる』であって、『やらなければならない』ではない。
結局、どうすれば良いのか?
あれこれ書いてきましたけど、結局のところ、
常識で判断し、荷が重かったら、理事会に要望書を出して判断してもらう。
というのが正解だと思う。
管理行為と保存行為の間にはグレーゾーンがあるので、管理組合によっては、どちらに転ぶかわからないからです。
理事会の判断が不当だと思ったら、裁判して決着を付ければ良い。
『強剪定』を、『自費』でやってしまいたい場合にはどうするか
『強剪定』は、勝手にやってはいけない。
剪定業者に頼む場合についての予備知識
植木の剪定業者に頼む場合、気になるのはやっぱり費用ですよね。
マンションの管理会社に業者を紹介してもらって、見積もりをもらいましょう。
相場は、職人さんが2人来て4時間程度なら、2~4万円ほどみたいです(2023年現在)。
切った木の廃棄などの作業も全部含めてですから、そのくらいはかかると思います。
作業を眺めていたのですが、一人が脚立に上がって枝打ちをして、もう一人が切った枝を軽トラの荷台に乗せ、自分も荷台に上がってデカイ剪定ばさみでもってバッキバキと細かくしていました。だから、最低2人は居ないと効率よく作業できないと思います。
ケチって「作業員は、一人でやってくれ」とか言わない方が良さそうです。
あと、高齢者事業団なんですが、こちらは一見安いのではありますが、作業員が玉石混合だという問題があります。良い人に当たれば最高だけど、そうでない場合は… しかも大勢でワラワラとやってきたりもするらしいし…
高齢者事業団としては、登録している高齢者に仕事を与えなければならないので、仕方ないのだとは思いますが、高齢者って、だめな人って信じられないくらいダメですからね…
わたしは過去に、壊れかけの高齢者(といっても60代後半)と仕事する機会がありましたが、思い出したくないくらい、なかなかに手ごわい相手でした。
そうかと思えば、キレッキレの優秀な高齢者も沢山いらっしゃるので、個人差が大きすぎて、これはもう運です。
手堅く職人さんでいくか、高齢者事業団で勝負するか、って話ですね。
まとめ
常識で判断して、
軽い作業は自分でやり、
荷が重かったら、理事会に要望書を出して判断してもらう。
※強剪定は勝手にやってはダメ。理事会に相談しましょう。
●備考
- 専用庭は共用部
- 区分所有法には、『行為の実施の決定方法』しか記されていない。
- 区分所有法は曖昧です。『誰の負担』で、『誰が実施しなければならない』、といったことは書いていない。
- 管理行為: 処分・変更に至らない程度の共有物の利用・改良行為(いかに利用・改良するか)(他の共有者の同意が必要)
- 保存行為: 共有物の現状を維持する行為(各共有者が単独で可)
- 『管理行為』を実施するには、理事会の決議が必要。
- 『保存行為』の実施は、専用使用権者が勝手にやってOK。